第77回談話会(文責:伊藤良一)
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第76回談話会(文責:伊藤良一)
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講師:吉田登氏 演題:江戸期浪華のイノベーター 町人学者山片蟠桃 |
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山片蟠桃は1748(寛延元)年に播磨国印南郡神爪(現・高砂市神爪)の百姓 長谷川小衛門の次男として生まれる。その生家は「糸屋」の屋号を持っていたことから、播州木綿を扱う商家だったと思われる。山片蟠桃という名前は、12歳で大坂に出、山片家に仕え、1805(文化2)年、蟠桃57歳のとき、多年の功績によって主家山片家の親類次席に取り立てられてから名乗ったのである。本姓は長谷川(名は有躬ありみ)である。なお蟠桃とは3千年に一度実を結ぶという伝説の桃のことである。 蟠桃13歳のとき、大坂堂島で米仲買商(大名貸もやっていた)をしていた豪商升屋に丁稚奉公する。升屋当主の山片重賢(しげたか)は蟠桃を懐徳堂に通わせる。蟠桃21歳のとき、升屋の主人
重賢は幼少の実子(重芳しげよし)を残して死ぬ。そのとき升屋は借金も増えて傾きかけていた。蟠桃は25歳で升屋の支配人になり9歳の小さい主人重芳を擁して、升屋を立て直すことを決断する。そして再建するのに11年ほどかかった。その頃、升屋は仙台藩をはじめとする全国の40数藩と取引を持つ大名貸に成長していた。 蟠桃が少年時代から生涯にわたって、朱子学など多岐にわたる学問を学び研鑚を積んだのは懐徳堂であった。懐徳堂は、幕末における緒方洪庵の適塾とともに大坂を代表する学塾であった。さらに蟠桃は麻田剛立の先事館にも通い天文学も学んだ。 晩年(54歳~72歳)蟠桃は生涯にわたる学問上の成果として、『夢の代』(最初の題名『宰我の償』(さいがのつぐない))12巻に集大成した。大坂経済界の中心人物として名をはせていた蟠桃は、中井門の諸葛孔明と呼ばれて、その学識も広く知られていた。(配布資料の冒頭より) |
講師:伊藤良一氏 演題:近年の知的財産権をめぐる内外の動向 |
1.職務発明により特許を受ける権利はこれまで発明者にあったが、法改正により予め契約しておけば当初から雇用者にあることに変った(2016.4.1出願分から)。 2.商標の登録対象はこれまでおもに文字、図形、記号、形状であったが、新たに、動き、ホログラム、色彩、音、位置の五者が加わった(2015.4.1施行)。 3-1.食品表示法が制定され(2015.4.1施行)、新たに機能性表示食品制度ができた。含有成分の機能性を証明する論文を付して消費者庁に届出だけでよい。 審査はない。 3-2.カタログなどの表示が不適切であると消費者庁から指摘されるケースが相次いでいる。例:水素水、プラズマクラスター。 ニセ科学に注意する 必要がある。 4.相次ぐ産業スパイ事件を受けて不競法が改正され(2016.1.1施行)、罰金の引き上げ、調査開始に告訴不要、立証責任は加害者になど、防止対策が強化された。 5.著作隣接権の中身が次々と増え、出来た権利に群がる関係者も増え、利用者は困惑。 6.知的財産高等裁判所が2005年4月に設立されて10年になる。その存在自体が知財重視の象徴とされ、画期的な判決も出ているが、技術知識積み上げの 仕組み不足の指摘も。 7.米国は1980年代から知財強化を図ってきたが、権利の濫用が目立つようになり、2005年からは逐次弱める方向に転換した。対外には強化を求めている (ダブルスタンダード)。 8.米国特許は世界唯一残っていた先発明主義を先願主義に改正した(2013年4月施行)。 9.2015年10月大筋合意したTPPで、知財関係では著作権の保護期間が著作者の死後50年を70年に変更などが含まれる。 遺伝子組み換え食品の表示不要化なども懸念。米国の離脱表明で行き先は不透明であるが、何れ問題化するのではないか。 以上 |
第75回談話会(文責:伊藤良一) |